「乳歯だから保険のむし歯治療でいいです」について

2016.09.27 by 池村 和歌子

「乳歯だからいいです」について。

神田ではあんまり小児を治療する機会は少ないのですが、たまに患者さんがご自分のお子さんを連れてきて下さるんです。
親御さんがもともと当院の患者さんの場合は色々知識を蓄えていらっしゃるのでご無体をおっしゃらないのですが、
まれにお子さんの治療のためだけにいらっしゃる方も。
そんな方の場合は「来院大変だから早く治療して欲しい」とおっしゃいます。
一応削らない治療と保険診療の違いを説明しますが、そのような方のセリフはいつも同じ。
「乳歯だから保険で良い」
・・・まあ、本当にもうすぐ抜ける乳歯であればそれはそれで良くて。むしろ別にむし歯治療もいらないケースもあるわけで(だってもうすぐ抜けるから)。
ただ、3~4歳の奥歯を「乳歯だから普通の治療で良い」というのは、池村は賛同しかねます。
保険で歯を削って詰める場合はプラスティックか銀。これは乳歯でも同じです。
で、子供(特に3~4歳)は治療時間に耐えきれないし急ぐと治療精度が下がる。
プラスティックを詰める場合削って(行程①)終わりではなくて、削ったところに接着剤を塗って(行程②)プラスティック詰めて(行程③)、形を整えてかみ合わせを整えて磨き上げる(行程④)が必要です。

行程①と④はドリルを使うので水が出ます。
乳歯は小さくて少し削っただけで神経出ちゃうことも多いので行程①の段階で詰めて終われずによけい大掛かりな根の治療に移行してしまうケースもあります。
神経が無事だったとしても子供はだいたい行程①で疲れ果てているので残りの行程に非協力的です(それはもう、先生が励ましても母親が叱りつけても嫌なものはイヤ!と言います)。
黙って口を開けていることが難しく、口も小さいので唾液が溜まるスペースも少なく接着剤を塗った歯にすぐ唾液がかかって濡れてしまい行程②がうまくいかないケースも多いです。接着剤が濡れてしまうとプラスティックが取れやすくなったり歯と詰めたプラスティックの隙間からむし歯に再感染しやすくなります。
さらに行程③のプラスティックを詰める段でも唾液に濡れてしまうケースが多いです。
工程④は困難を極めます。ドリルを使い形を整えたりかみ合わせを整えたり詰めたプラスティックを磨いたりしますが、行程①のむし歯を削るドリルで怯え切った子供はもう耐えられないからです。
さらにいうと、乳歯は永久歯よりも水分含有量が多いので適切な工程を行っても(接着剤は水がつくとくっつかない)治療がうまくいかないこともあります。
では詰め物を銀にしたとして?
銀を詰める場合は行程①の後に型取りをします。短くても2分はじっとしていてもらわないといけませんがこれまた困難を極めます。
やはり唾液も多いし、じっとしているのが難しいので正確な型取りが難しい。
その型で銀を技工士さんが作ってくれますが、すぐにできるわけではないのでセットはだいたい翌週になります。
つまり1つのむし歯治療に来院回数は2回になります。
銀を歯に詰める時にセメントを使いますが乳歯は水分含有量が多いのでセメントも溶出しやすい(つまり銀が取れやすいってことです)。
と、いうわけで、乳歯の治療はものすごく難しいのです。
1~2回で終わって親御さんは「良かった!」と思っているかもしれませんが、実は更なる通院への序曲なのです。
治療される子供も大変。嫌がる子供を歯医者へ連行する親も大変。
大変スパイラルに巻き込まれていくのです。
「乳歯抜けるまで繰り返し通院も治療もがんばる!」
それも良いでしょう。
ただ、乳歯というものはいきなり全て抜けていきなり永久歯が生えてくるわけではありません。
混合歯列期と言って、乳歯と生えかけの永久歯が同居する時期があります。その時期に状態の悪い乳歯があればどうでしょう?
当然大切な大切な永久歯にも影響がでますね。だって同じ空間に存在しているのですから。
「とにかく今日治療して!通院大変だから」
お気持ちお察ししますが、なぜその子がむし歯になってしまったのかを一緒に考えてあげませんか?
子供の健康・未来を守ってあげられるのは他の誰でもない親のあなたなんですから。
削らない治療も当然おすすめしますが、あなたのお子さんがこれ以上むし歯に悩まされない人生を歩んで行くために一緒にサポートしてあげませんか?
そのための知識と行動をお伝えするのが当院の使命と考えておりますよ。

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池村 和歌子

池村 和歌子

神田で歯医者さんやってます。 なぜ神田?それは日本を支えている今働いている人たちの歯が大変なことになっているから。 働く人の健康を守ることが国力向上!と思っているので神田で歯医者さんやってます。

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